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水溶性切削油の腐敗について
いつも弊社HPをご覧いただきありがとうございます。
今回は水溶性切削油の腐敗に関する記事です。
水溶性切削油は水で希釈しているため、長期間放置してしまうと腐敗が発生します。
特に夏場等の気温が高い時期に、切削油の腐敗による悪臭を製造現場で
感じられた方もいらっしゃるかと思いますが、改めて何故腐敗が起こるのかを
簡単に紹介できればと思います。
腐敗とは?
辞書には「有機物が微生物の作用によって分解され、有毒物質を生じたり悪臭を放つように
なったりすること」とありますが、
切削油においてもタンク内で同様の事象が起きており、微生物(細菌)が増殖し、その過程で
特有の臭いを放出しております。
腐敗のメカニズムとは?
1.好気性細菌の繁殖
好気性細菌は、酸素がないと生育できない細菌で潤滑油や油剤成分を栄養源として繁殖します。
好気性細菌は、糖やタンパク質を生成しますが、同時に酸素も消費します。そのため、水溶性
切削油を使い続けると、タンク内では酸欠状態になっていきます。この時点では臭いは殆ど発生しません。
2.通性嫌気性細菌の繁殖
通性嫌気性細菌は、酸素の有無に関わらず生育できる細菌です。通性嫌気性細菌の中には
有機酸を生成するものがあり、pHが低下していきます。また、長期間使用していく中でタンクに
摺動面油が混入し、浮上油が蓋をする形となり、酸素を遮断していきます。
(pHが低下することで更に細菌が繁殖しやすい環境になります)
3.偏性嫌気性細菌の繁殖
偏性嫌気性細菌は酸素を嫌う細菌で、好気性細菌が生成した糖やタンパク質を栄養源に
増殖していきます。その時、代謝物として悪臭の硫化水素などを放出することで作業環境を悪化させます。
このように水溶性切削油の腐敗は段階を踏んで進行していくことが考えられています。
細菌の増殖する要素は?
細菌が生育するためには重要な要素があり、温度・水分・栄養などが挙げられます。
細菌は30~40℃で最も増殖しやすいため、夏場はこの条件に当てはまります。また、
細菌の増殖には水分が不可欠で水溶性切削油の主成分である水は、細菌の生存条件となります。
最後に細菌の栄養源は、水に含まれるミネラル分や水溶性切削油の鉱油や油脂、界面活性剤などが
挙げられ、浮上油や切粉などの金属成分も細菌の増殖に繋がります。
対策方法は?
本来であれば、水溶性切削油を含む、作業環境内から細菌を排除することが好ましいですが、
加工物やタンクだけでなく、空気中には多くの細菌が存在しているため、完全な無菌状態にすることは非常に
困難となりますので、腐敗を防ぐためには、細菌の侵入を防ぐことよりも増殖させないことが重要となり、
水溶性切削油を日々管理することが一番の対策になります。
これらの管理の中に濃度・pH・浮上油や切粉除去が挙げられます。適切な濃度やpHを維持することで、
水溶性切削油内に配合されている抗菌剤や防腐剤が働き、細菌の増殖を抑えます。浮上油や切粉の除去は、
細菌の栄養源の除去や嫌気性細菌の発生を抑制する目的があります。
今回はこちらで以上となります、最後までご覧いただきありがとうございました。